「綺麗〜」


ガラスケースの中の指輪を、望美は目を輝かせながら見つめる。


そんな望美に将臣は困ったように頭をぽりぽりと掻き始めた。


「いくらなんでも、そんな高いのは無理だぜ」


「わかってるよ。…将臣君とこうしてデートできるだけで充分!」


行こっか…とにっこり微笑み、望美は将臣の腕に抱きつく。


「…もう逢えないかと思っちゃってたし」


今にも泣き出してしまいそうな声でぼそりと呟くと、望美はえへっと笑って見せた。






いろいろな経験をして、かつては敵同士にもなった。


そんな二人がもとの世界に戻ってきてから、
『恋人』として過ごす初めてのクリスマス。


望美は嬉しくて仕方がなかった。














Ring














楽しい時間というのは、本当にあっという間に過ぎてしまう。

二人っきりでデートをして、食事をして、
あの世界にいた時には考えられなかった幸福な時間。

夢だったのではないかと思うほど幸福すぎて、望美は寂しさを感じながらベッドの中にいた。






明日になったら夢が覚めてしまいそうで。






なかなか寝付けずに、寝返りをうった瞬間だった。


コン…と、何かが当たるような音が聞こえ、望美は身体を起こした。


電気をつけると、再び同じ音が響く。






まさか。






望美が窓を開けると、向かい合った隣家の窓から見慣れた人物が顔を出していた。


「よ! 悪いな、起こしちまって」


「起きてたから大丈夫。でも、どうしたの? こんな時間に…」


「ちょっとな。そっち、行ってもいいか?」


ちょんちょんと指をさすと、将臣は悪戯気な笑みを浮かべた。


「いいけど、まさか…」


望美の言葉を聞くなり、将臣は向こうの窓からこちらの窓へと飛び移った。


やっぱり…と望美は小さくため息をつき、思い出す。


昔から、将臣は用事があるとよくこうして飛び移ったものだった。


幼い時は落ちかけたこともあるのだが、全く懲りない。


「ホント、危ないなぁ…」


「慣れてるんだから平気だろ」


すとんと足を地に下ろし、将臣は辺りを見回す。


「お前の部屋も、変わってないな」


懐かしそうに呟く。






あちらの世界での生活。

望美にとっては数ヶ月のことでも、将臣にとっては3年もの月日が経っているのだ。






急に寂しくなって、望美は将臣に抱きついた。


「望美?」


「…なんとなく」


望美は将臣の顔を見上げ、にっこりと微笑みを浮かべる。


「…望美、手…だしてみろ」


「え?」


「いいから」


望美が右手を差し出すと、将臣は持っていた小さな箱を渡した。


手のひらに収まる小さな箱。


望美は驚いて目を丸くする。


「開けてみろよ」


将臣に促され、望美はそっと箱を開ける。


「これ…」


中を見て、望美は言葉を失った。






嬉しすぎて、とても驚いて。






中に入っていたのは、昼間に望美が眺めていたあの指輪だった。


値札に書かれた5ケタのあの数字は、限りなく6ケタに近い数字で。


「どうして…」


「お前と別れた後、買いにいったんだよ。結構恥ずかしかったぜ?」


笑みを浮かべてその指輪を取り出すと、
将臣は望美の左手を取ってその薬指にそっとはめた。


「ぴったりだな」


将臣満足そうな笑みを浮かべると、まっすぐと望美を見つめた。


「…あっちの世界で暮らしてる間、ずっと不安だった。
お前は、もう俺のことなんて忘れてるんじゃないかって…」






      他の男に取られるんじゃないかって…さ。






将臣は望美の身体を抱き締める。


その腕は熱くて、力強くて。


望美はゆっくりと、その背に腕を回す。


「将臣君以外の人なんて、出来るわけないじゃない。
小さいときからずっと、将臣君のことしか…見てなかったんだよ?」


嬉しそうに涙をうっすら浮かべながら、望美はその瞳をまっすぐ見つめる。


「…それ、ずっとつけてろよ。俺のもんだって証だから…」


「うん…」


「外す時は…」






    結婚する時、だからな。






その言葉に驚く望美の唇を、将臣は強引に口付けで塞ぐ。






反論などさせないように。

嫌と言わせないように。






何度も何度も、口付けを落とした。












聖なる夜。

恋人たちに祝福を        


















将臣です〜!
なんかですね、ありきたりになっちゃった…(笑)
窓から飛び移るネタをやりたかったんですよ!(笑)
でも、なんか過去に似たようなネタをやった気が……デジャブ?(笑)


なぜかクリスマスなのに軽くシリアスちっく…(苦笑)
何で甘く書けないんだ??
だめですね〜(死)


















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